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【書籍】 なにより恐ろしいのは、“人間“ 『黄金の百合の骨』(恩田陸)
2016/11/03
Magiyamaです。
今日読んだ本は『黄昏の百合の骨』です。これは恩田陸さんの作品です。
恩田陸さんは様々な書籍を刊行されていますね。高校生の頃に友達から貸してもらって何冊か読んだものです。
そのころの高校の担任が早稲田大学在学中に同級生だった話を聞いたことがあり、その記憶が強く頭の中に残っています。
それでは、この書籍の紹介に移ります。
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【あらすじ】
主人公の理瀬は、「この家に半年間以上住まなければならない」という祖母からの遺言のもと、長崎の祖母の家に住むことになる。理瀬は祖母が伝えたかったメッセージを解くべく謎に挑む。しかし、周囲では毒殺や失踪など奇妙な事件が起き、それをきっかけに思わぬ真相が明らかになっていく。
【感想】
初めは、登場人物の相関関係が少し複雑で理解するのに時間がかかった。
しかし、一度その人物や文体を自分の感覚で捉えられるようになれば(スティーブン・キング風に言うとテレパシー)、どんどんと物語に引き込まれていく。
全体にダークな雰囲気の物語だが、同じ屋根の下に住む理瀬と叔母二人による腹の探り合い、嘘で塗り固めた会話がよりドロドロとしたものに変えている。奇妙で不気味な力を持った表紙や挿絵からも物語の狂気さを感じさせる。
さらにそれの不吉さを助長させているのは、文章の所々に現れる強烈な匂いを放つ“百合”。
どんよりとした家に存在するこの百合が持つ独特の美しさが逆にギャップを生みだし、ある種のうす気味悪さを読者に与える。
この作品のタイトルにも含まれており、この百合が大切なキーワードであることを感じながら読み進めることになる。
「人間とはなんて恐ろしい生き物なのだろうか」
読書後、ついそう思わざるを得なかった。
時として、人間は自らのエゴを優先し、そのためなら別人になって演技を行うことだって平気でやってのける。
普段、何気なく接している人が実は残酷的な別の顔があるかもしれない。
そんな性悪説的に人間を捉えなければならないのは、なんて悲しいことなのだろうか。
悪は善よりも美しい。善は悪の上澄みでしかない。
そう、本文中にも書いてあった。
だが、悪だけでは決して人間社会は成り立つことはできない。
どうしたら心の奥深くまで根付いた悪に打ち勝つことはできるのだろうか。
私たちのできることは、その悪の美に屈しないこと。
そして、精一杯、善を信じてあげることだけだ。
そこでできたものは極めて脆いものかもしれない。
しかし、それがこの世を平和的に生きていく方法なのだ。
magiyama
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